• 徹底排除宣言

kaikan小説 38|マネー&ラブ

「もっと、お化粧を派手にしてみてもいいと思うんだよね。ついでに服装も地味だしね」

思うのではなくてそうしてほしいんだけれど。わかる? と、遠巻きにいわれているのだとわかる口調にあたしはうなずくしかない。薄化粧な顔を下に向け、全身真っ黒な服装を身にまとって。

今回は思い切って『外でのデートプラン』を提案してみたのだ。相手は彼氏は彼氏でも『レンタル』の彼氏。返却は今日の午前0時。当日返却なわりにいやに高額なのはテレビ画面で見るのではなく現実にいて話をしあるいは手をつなぎキスができるのだ。あこがれの『レンくん』と。

最近は顕著に『女性向け風俗店』が増えていてネットの閲覧だけでもかなり迷うし、え? もうこんな時間なの? みたいなことも多々ある。それに。あたしは最近の『女性向け風俗店』について感じることがある。

顔が整いすぎている人が多いのだ。こういうサービスを知ったのは約10年以上も前だったけれど過去に比べたら男性の質が高いふうに思う。それに女性向け風俗店に従事する男性は皆一様にエスコートもうまいし洗練されている。レンくんもその一員だけれど、ひとつだけ他の『レンタル』と違いがある。

「レンくん、こんな幸薄な顔をしたあたしと歩くのいやだよね」

あたしならいやだから少しだけ半笑いで聞いてみる。だったらもっとオシャレしてこればいいのだけれど。

「そうだね」

彼は容赦ない。素直に思うままに認める。

「そうだよね」

夕方の5時でも初夏のこの時期はまだ明るい。昼間の明るさよりも控えめだけれど。

「けど、」レンくんは、けど、と、前置きをし、目の前にあった石を蹴る。石はポンと飛んで道路の端に転がった。

「勘違いしてほしくないんだよ。確かに僕はお節介だしいやに辛辣だし女性に、いや、お客さんに対してもね、アドバイスをしていつまでも綺麗でいてほしいんだよ」

うん、そうなんだ。彼は自分でいったことなのにまるで自分に言い聞かせているふうに見えた。

「そうね。そんなこといってくれるのレンくん以外いないわ。普通いわないでしょ? だってあたし一応お客さんなんだしね」

あたしも目の前にある小石を蹴る。そしてづつける。

「あいたいけどねお金もいるしおんなってとてもお金がかかるわ。だから働くしかない。けれど今の原動力はレンくんなんだ。もっとがんばって働いて自分を磨くわ」

「おおっ、いいこというじゃん。ユナちゃん」

ラブあんどマネーね。

あたしは心の中でつぶやく。好きだから綺麗になる。だからがんばれる。世の中ってうまくできているなぁ〜。35歳のあたしはほとほと感心する。

「居酒屋行きたいな」

だんだんと空の色が群青色に染まりつつある。やべー、腹の虫が鳴った。レンくんはそういいながら、お腹を抑える。

「あはは。あたしもお腹すいた。そのあと映画いかない?」

「どこにでも行くよ。0時まではユナちゃんのものだから」

そうね。あたしはレンくんの手をとって指を絡ませる。心地のいい初夏の風があたしとレンくんの間を通り抜けてゆく。

この記事を書いた人

エロいことが好きな謎のアダルトライター 基本的には眠ることが一番好き