• 徹底排除宣言

kaikan小説 14 |すきなのに

「佐藤って浮気したことないでしょ?」

とうとつに切り出されてあたしは微笑んで、ないないと手のひらを顔の前でヒラヒラと振った。

目の前にいる涼子は細くてしなやかな指先でアイスティーのストローを持っている。真冬だというのにこの喫茶店は真夏のよう暖房が効いている。まわりを見回す。ほとんどの人が冷たいものを注文している。

「なによ。急に。浮気なんて普通はしないでしょ?藪から棒に」

「はい? 浮気をしない主婦の方がね最近少ないのよ。あなた本当に生真面目ってゆうかなんとゆうか」

涼子は氷で薄まったアイスティーをすすりながら呆れた声をあげた。

「いいの。あたし。夫ラブだし」

「へー。ごちそうさま」

本当に夫が好きだ。子どもはまだいない。けれど結婚3年経った今でもラブラブだとは思う。

けれど……。

「あたしはね、浮気してるよ。うーん。浮気ってゆうか、ホストにねラブなんだぁ〜」

「ホストって?」

「だから、出張ホスト。お金を介してあってるの。なんかさ、お金を払っているってのもあるけれど、ちっとも後ろめたくないのね。むしろ夫に優しくできるんだ」

酔ってもいないのに涼子はやけに饒舌でそれでいてうっとりとした表情を向けた。へー。そうなんだぁ。あたしはそのときはちっとも興味希薄で右から左へ聞き流していた。

______

 

「けれど、僕を呼んだってわけですね。佐藤さんは」

「佐藤さんってね、苗字で呼ぶのはよしてちょうだい」

あはは。タケルくんは大仰に笑う。

「はい。はい。み〜ほさん」

タケルくんは涼子の紹介だ。あのあと、涼子のごり押しもあって一度だけ呼んでみて。紹介割があるの。と、両手を合わせられてしまい断れなかったのだ。

「この前はオイルでしたよね? 今日はバウダーを試しませんか?」

「パウダー? ですか? 天花粉の?」

「はい。まあ、うつ伏せになってみて」

シャワーも済んでいたのでうつ伏せになる。タケルくんはいつも洋服は脱がない。白いワイシャツに紺色のスラックスという清潔感ある出で立ちだ。

バスタオルをはらりと剥いでうつ伏せになった。

ハウダーを落としますね。タケルくんの声は心地がいい。背中に今までにないようなソワソワ感が押し寄せて、キャッと声をあげてしまった。

さらさらと滑っていくパウダーはなつかしい匂いもするけれどそれ以上にタケルさんのフェザータッチが絶妙であたしはため息をひとつ落とす。

「くすぐったいわ」

身体を捩って素直に告げる。くすぐたいという単語は感じてるという同義語。タケルさんが以前そういっていた。

背中からお尻太もも足の裏足の指。

おもてむきになって乳首からおへそ。そしてもっとも性感帯が走っている秘部に向けでパウダーの舞いがおこなわれた。

声もだせないほどの強いカイカンがあたしの身体の全てを支配した。感じすぎると身体が震える。

目の前がプールに潜ったように潤んでいる。あれ? あたし……。

「どうしたの?」

タケルさんがあたしの頬を伝う涙を短めな爪の指先で拭った。

あたしは首を横にふるふると少女のように振ってから

「わからない」

それだけ声に出して顔を両手で覆う。

「夫のことは好きなの。けど、けど、」

タケルさんは優しい顔をしてあたしの背中を撫でている。いいですよ。感じても。なにも後ろめたくなどはないから。みほさんは女です。誰でも感じて頭の中が真っ白になりときに取り乱したりもします。

だから。

暖房が効いていた部屋だけれど裸だったと意識したせつな急に悪寒が走る。

タケルさんは相変わらず優しい目を向けてあたしをみつめている。

この記事を書いた人

エロいことが好きな謎のアダルトライター 基本的には眠ることが一番好き